ALD国際共同治験
ALD

 

このページでは、現在進められているALDの多施設国際共同治験 (MCS: Multi-Center Study of X-ALD)や厚生省 特定疾患対策研究事業についてレポートしています。
  多施設国際共同治験 (MCS)
  厚生省 特定疾患対策研究事業
  ロバスタチン臨床治験

 

 

多施設国際共同治験 (MCS)

 ここでは、ALDの多施設国際共同治験活動について紹介します。少々耳慣れない言葉ですが、要はALDの治療・研究について全世界の医療機関から情報を集めて管理し、分析したり評価することで今後の治療・研究に役立てようという試みです。かなりスケールの大きい話ですね。運営の主体がどこにあるのか不明ですが、NIH (米国 保健省)、FDA (米国 食品医薬品局)、ULFが活動に大きく関係しています。治験と言っても、単なる臨床治験に留まらず、検査・評価方法の標準化など医療全般に関わったものになります。
 ULFのサイトにも、もちろんこの情報は掲載されています。そこには、まず比較的患者数の多いALDについてパイロットプログラムとして実施してそのノウハウなどを蓄積し、今後全てのロイコジストロフィーについて行う際の礎とする、ということが記載されています。これも、また長期的視野に基づいた大変な構想ですが、希少難病となるとこうした国際的なネットワークを使ったデータ収集が研究や治療には不可欠なのでしょう。あまり詳しい情報はありませんが、以下のULFのページをご参照ください。

ULF - Multi-Center Study of X-ALD (英文)
http://www.ulf.org/ulf/mcs/index.htm
 この活動に先立ち、1999年1月に米国で「副腎白質ジストロフィーの治療法に関する国際会議」が開催されました。議長は、Kennedy Krieger InstituteのDr. Hugo W. Moserが務めています。日本からは、新潟大学 脳研究所 神経内科の小野寺先生が出席されました。この会議の模様は、ULF News Vol.16 No.1 Spring 1999 (オンラインでは参照不可) に掲載され、またその日本語訳がMLD Home Pageにて公開されています。

MLD Home Page - ULF News Vol.16 No.1 Spring 1999
X染色体性副腎白質ジストロフィーの治療法に関する国際会議報告
http://www.jura.jp/mld6/imd/ulf/news/article/vol16-1_x-ald_conf.htm
 この国際会議の中で、ある治験計画について議論が持たれています。これが、これから実施が予定されているロバスタチンを用いた臨床治験になりますが、詳細については後述します。

 

厚生省 特定疾患対策研究事業

 ALDの治療のページでも紹介している通り、厚生省の平成11年度特定疾患対策研究事業として「副腎白質ジストロフィーの治療法開発のための臨床的及び基礎的研究」が採択されていています。この研究班の班長は、新潟大学 脳研究所 神経内科の辻教授です。なかなか国内では成果を目にする機会が少ないALDやロイコジストロフィーの研究ですが、今回こうした事業によって治療・研究が大きく前進することが期待でき、またこれらの成果が公開されることは、患者・家族にとっては大変喜ばしいことであると思います。
 なお、特定疾患対策研究事業は平成11年度から始まった新しい厚生科学研究費補助金で、その概要は、

 原因が不明、治療方法が未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾患のうち、希少性等を有するために全国規模で研究を行わなければ原因の究明や治療方法の確立が進まない特定疾患を対象として、臓器別、疾患別に特定疾患医療に役立てる研究開発を進めるとともに、広く横断的、基盤的に特定疾患医療に役立てる研究開発や画期的な治療方法や患者の予後や生活の質の改善方法の研究開発を目的とする。
と、されています。ALDの研究は、その中で「3 重点研究」とされており、

 特定疾患患者の予後や生活の質の改善を目指し、又は明確かつ具体的な目標を設定し、画期的な成果を得ることを 目的とする。なお、研究計画の作成に当たり、以下のア及びイの項目について適宜明らかにすること。

ア.重症難病患者の予後の改善や生活の質の向上、効率的な医療技術の開発等
イ.特異性の高い早期診断法、効果的な治療法、低侵襲性の診断・治療法の研究
研究期間: 3年

と、なっています。この研究成果については、厚生科学研究成果抄録データベースに掲載される予定になっていますが、実際に登録されるのはいつになるのか不明です。
 1999年から厚生省のサイトには研究テーマの募集採択の結果は掲載され、ロバスタチンの臨床治験を中心とした動きについて断片的に聞いていましたが、2000年1月になって研究班の班会議および治療法としての"骨随移植"をテーマにしたワークショップが開催されたという連絡がありました。事務局を務められた新潟大 小野寺先生から、プログラムおよび抄録を送って頂きましたので、紹介したいと思います。この研究班の活動内容および方向性が、これによって見えて来ると思います。

副腎白質ジストロフィーの治療法開発のための臨床的及び基礎的研究班
平成11年度 班会議 および ワークショップ「副腎白質ジストロフィー症の骨髄移植の臨床的効果」

平成11年度 班会議 および ワークショップ プログラム

 患者・家族としては、これらの動きを知っておくことは現状の治療方法・症状の如何に関わらず重要と考えますので、簡単なサマリーを掲載したいと思います。なお、このページの著者はこの会議に出席しておらず、抄録からのみ得た情報であることをお断りしておきます。文責はこのサイトの著者にあり、質問等は にご連絡下さるようお願いします。

班会議

  • 岐阜大 鈴木先生からは、骨髄移植例を除く15例の小児型・思春期型ALDの臨床経過(発症年齢、症状の発現時期など)を解析した結果の発表。今後の治験などの基礎資料になりうると結論付けています。
  • 九州大 山田先生のノックアウト・マウスに対するロバスタチンの効果の発表。以前より、ALDノックアウト・マウスはALDのモデルとして完全ではないのでは? ということが言われていましたが (→ The Myelin Project / Progress in ALD Research, June 10, 1999)、結論としては極長鎖脂肪酸の蓄積は改善しないとされています。
  • 富山医科薬科大 今中先生からはペルオキシソーム膜に存在するタンパク質(ALDP、PMP70など)の研究について。脂肪酸代謝との関連を調査しています。
  • 東海大 加藤先生からは、国内外で実施されたALDに対する造血幹細胞移植を集計・解析した結果の発表。HLA適合ドナーが得られれば、できる限り早期に移植を行うのが望ましいとされています。
  • 新潟大 辻先生・小野寺先生からは、多施設国際共同治験の検討課題について。「どのように標準化されたスケールで治療効果を判定するか」、特に「検査と評価の標準化(頭部MRI、神経心理学的検査)」が課題とされています。


  • ワークショップ 「副腎白質ジストロフィー症の骨髄移植の臨床的効果」
    Session I - リソソーム病の骨髄移植
     ムコ多糖症(主にHunter症候群)やGM1ガングリオシドーシスの骨髄移植の臨床的効果についての発表があったようです。これらからも、国内ではムコ多糖症、ALD以外の神経症状を伴うような先天性代謝異常症の骨髄移植はあまり実施されていないことが想像されます。

    Session II - ALDの骨髄移植
     ALDの骨髄移植の臨床的効果についての発表があったようです。抄録では、国内の施設で行われた総計18例が掲載されていますが、移植時期(発症前・発症後・発症からの期間)、症状、前処置方法、ドナー(血縁・非血縁)、HLA一致度、移植細胞(骨髄・臍帯血)、GVHD予防方法、GVHD発生、合併症など個人の状況が様々であることがわかります。

    Session III - 124例のALD患者に対する骨髄移植の効果解析
     Univ. of MinnesotaのDr. Charles Petersによる、世界中で実施された骨髄移植による効果解析の発表です。Peters先生は、同じミネソタ大のKrivit教授と共に、代謝異常症の骨髄移植による治療をリードしてきた方です。過去18年間に124ケース、そのうち30例がミネソタ大で行われており、これらを年齢や症状、IQ、MRI所見等々により分析しています。

     この会議の報告書も送って頂けることになっていますので、そちらもレポートする予定です。また、今後も班の研究および班会議についても何か状況がわかれば、都度情報を掲載してゆくつもりです。

     

    ロバスタチン臨床治験

     前述の多施設国際共同治験および厚生省研究班の活動の一環として、平成12年度には日本でもロバスタチンの臨床治験が実施される予定になっています。ロバスタチンは米国などで使われている高コレステロールの医薬品ですが、最近中枢神経に対する効果が確認されてきています。Dr. Inderjit Singhが1998年 The New England Journal of Medicineに発表した記事では、AMN患者などにおいて極長鎖脂肪酸のレベルを低下する効果があったとされています。ペルオキシソームにおいて極長鎖脂肪酸の分解を助け、また抗炎症作用もあることがわかっています。(ALDの治療のページを参照)
     臨床治験については、まだ具体的なところまでは発表できる段階ではないそうですが、新潟大 小野寺先生からは今後詳細が明らかになる度に連絡を頂けるという話を頂いていますので、わかり次第こちらのページで紹介したいと考えています。
     断片的で申し訳ありませんが、今までのわかっている情報は以下のようになります。
  • 国際共同治験の申し込みは、1999年10月に実施
  • 現在は、NIH (米国 保健省)の最終決定待ち
  • 実施の詳細は、主治医を通して連絡される予定
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