ALDについて
ALD

 

この病気に関する、基本的な情報です。併せて、ALD患者の親として何をしたら良いのか、記述してあります。
  ALD 〜 どんな病気?
  もし診断されたら…
  遺伝カウンセリング
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ALD 〜 どんな病気?

 X-linked Adrenoleukodystrophyは、"副腎白質ジストロフィー"や"アドレノロイコジストロフィー"、"副腎脳白質ジストロフィー"、"副腎白質変性症"などと呼ばれている疾患です。このサイトでは、単にALDと略すことにします。
 ALDは、脳内の白質と副腎皮質に影響を与える病気です。副腎白質ジストロフィーの名前は、ここから来ています。脳内の白質に影響が出る場合、神経細胞を包んでいる髄鞘と呼ばれる部分を作っているミエリンという物質が損傷を受けてしまいます。これを脱髄と呼びます。これによって、中枢神経系に混乱が生じ、神経系の各種障害が発生してしまうと考えられています。なお、この脱髄が起こるメカニズムは現在もなお完全には解明されていないようです。具体的には、性格の変化や行動異常、知能・視力・聴力の低下などに始まって、痙攣、四肢の障害、食事の摂取困難などに進行します。副腎に影響が出る場合は、皮膚の色素沈着や嘔吐、ひどい場合は副腎不全を起こします。
 ALDは進行性の病気です。経過は常に進行性で、何もしなければ病状が戻ることはありません。やっかいなことに、発症直後は比較的急激に進行する場合が多いようです。
発症する年齢は、4才から8才が多いと言われていますが、最近の研究では大人になってからの発症例も多いことがわかっているようです。若年で発症するほど、進行が早い傾向があるようです。また、発症するまではごく普通に成長してきたケースが多いようです。
 ALDは、DNA情報の異変によって引き起こされる病気です。いわゆる遺伝子病ということになります。その病因遺伝子は1993年に発見されています。遺伝子座はX染色体(Xq28)に存在して、遺伝様式としては伴性劣性遺伝になります。つまり、女の子の場合はX染色体を2個持ちますから、病因遺伝子を持つX染色体を1個受け継いでも、他のX染色体1個が正常ならば、発症するケースは少ないです。(約20%が中年層以上で軽い症状が出るというデータもあります) 男の子の場合、X染色体は1個しかありませんから、病因遺伝子を受け継いだ場合は発症する可能性が高くなります。
 ALDはペルオキシソーム病のひとつとも呼ばれます。これは、ALDの原因となる遺伝子産物 (ALDP) は、細胞内にあるペルオキシソームという器官の膜に存在して、代謝のための物質移送に関わっていると考えられるためです。が、これも詳しい機能については、完全に解明されていないようです。
 ALDは先天性代謝異常症とも呼ばれます。ALD患者のほとんど (発症前も含む) は、全身において極長鎖脂肪酸 (VLCFA) の増加がみられます。つまり極長鎖脂肪酸の分解を行う代謝メカニズムに何か問題があることがわかっています。ただ、極長鎖脂肪酸の増加が、どう白質や副腎の症状に関連しているのかわかっていません。最近では、極長鎖脂肪酸は直接の原因ではなく、必ずしも極長鎖脂肪酸のレベルを下げれば症状が良くなるわけではないことが言われているようです。
 実は、ALDは発症年齢や症状の現れ方によって、いくつかのパターンがあります。典型的な例を以下に示します。
 なお、新生児型のALD (Neonatal ALD)と呼ばれるものは、ALDとは原因となる遺伝子も遺伝様式も異なります。ALDはペルオキシソームに存在する酵素の欠損とされていますが、新生児型のALDはペルオキシソーム自体の形成異常とされています。
 このように、ALDの症状の出現症状は非常に変化に富んでおり、また進行の度合いも様々です。症状の個人差が大きい病気と言えます。家族歴(兄弟や親類のケース)や極長鎖脂肪酸のレベルからも、その症状の出方 (進行のしかた) を予測することはできないようです。
 残念ですが、症状は進行性で可逆ではありません。つまり、停滞するか悪くなる方しか進みません。いくつかの治療方法が試されていますが、現状は「確実な」効果が確認されているものはありません。とはいえ、実際に治療法が効いているケースも多数あるわけですから、あきらめずに最適な治療法を行うべきだと思います。また、ALDはさかんに研究が行われており、新しい薬や治療法の研究成果が次々に報告されています。いつの日か、ALDの治療方法が確立される日を信じて治療にあたる考えもあります。なお、古い医学書には、かなり厳しい生存期間が書かれている場合が多いと思いますが、現在ではケア技術の向上によって、はるかに長い年月を過ごすことができるようです。

 

もし診断されたら…

 もし、ALDと診断されたら、親は何をしなければならないのでしょうか。実はやるべきことは、たくさんあります。ここでは、それらをまとめてみました。
 なお、幼児・小児が発症している場合は、発症後の初期が一番症状の進み方が早くなるようです。したがって、スピードが肝心になりますので、最優先で事に当たる必要があります。

まずは診断を確定する

 学力・注意力の低下、性格の変化、視覚・聴覚・運動機能の異常などの症状から、頭部のMRI検査によってALDの疑いが持たれる経過が多いと思います。確定診断には、血漿中の極長鎖脂肪酸の値を測定しますが、結果には1〜3週間かかるようです。同時に遺伝子診断 (DNAの解析) を行う手段もありますが、これはかなりの時間がかかるはずで、確定診断後に結果が出ることなると思います。副腎に症状が出る場合は、状態が急変することもありますので、副腎機能の検査をこの時点で行うことになるでしょう。その他、脳波や神経伝達速度の測定などの神経学的な検査も同時に行われるはずです。
 実際、これらの検査は、子供にとっては苦痛なものばかりです。MRI検査では、どうしても動いてしまう小さな子供では、無理に眠らされたりするでしょう。しかし、どれも確定診断とその後の治療のためには必要な検査です。親としては、なるべく検査に対する恐怖や不安を取り除くことで、お子さんを支えてあげて下さい。
 診断が確定しないことには、以下に記述する治療を行うことや公的支援も受けることもできないわけで、できればなるべく急いで確定診断してもらいたいものです。

治療計画を立てる

 疑いが持たれてから、もしくは確定診断後に、担当医と今後の治療方針について話し合いを持たれると思います。そこで担当医は、専門の医師に意見を聞きながら、患者にベストな案を提示されるはずです。親の側も、自分たちの考えを伝え、疑問な点は質問し、納得いくまで話し合いをなされるのが良いと思います。ALDは難病です。現時点では、確定したプロトコールがあるわけではありません。極端な話、今後苦痛を伴う治療を行わずに (経過観察のみで) 残りの人生で楽しい思い出を作るのか、あきらめずに色々な治療に挑戦して少しでも長く生きる (いずれ治療法が発見されるまで) のか、患者本人が選べない場合は、親が代わって選択する責任があるということです。
 もし、担当医の診断内容や治療方針に納得できなかった場合は、他の専門の病院で意見を聞く方法もあります。セカンド・オピニオンと呼ばれるこのやり方は、特に米国では広く普及しているようです。インフォームド・コンセントと同様、まだ日本では決して理解がある医師ばかりとは限りませんので、漠然とした言い方になってしまいますが、担当医との信頼関係を損なわないやり方を模索して実行されるのが良いと思います。

治療を行う

 確定診断後に、実際に治療が始まることになると思います。医療行為は担当医や看護婦が行うことですので、親として出番がありません。精神的なフォローを中心に行うことになるでしょう。お子さんの病気の治療に対する不安を和らげてあげて下さい。特に小さいお子さんが入院する場合は、かなりの精神的な負担になるはずです。
 また、親はいつも子供を近くで見ていますから、検査データにも出てこないようなちょっとした変化にも気づくことが多いでしょう。これらの変化は治療において重要なサインになる可能性もあるので、遠慮なく医療関係者に気づいたことを話した方が良いと思います。
 ALDのような病気では、放置しておけば徐々に機能が失われていきます。この機能を少しでも維持する意味でのリハビリテーションは必要だと思います。また、長い入院生活を送るうちに、衰えた身体的な機能を回復したい場合や、何らかの治療によって症状の進行が止まった時に、失われた機能の替わりになるものの訓練を行いたい場合も、リハビリテーションを行う理由になります。これらの機能障害、能力障害には医学的リハビリテーションが必要になります。しかし、素人が真似事を行うことは、かえって危険な状態になることもあり得ます。必ず、リハビリテーション科の医師の診察を受けるようにして下さい。入院や通院で理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の指導を受けることができない時は、家庭でできるプログラムを作ってもらうのも良いでしょう。

介護の準備

 症状の進行によっては、今まで自分でできていたことができなくなってしまいます。場合によっては、介護を行うための準備が必要になります。入院中は病院の設備や看護婦の介助がありますから、主に在宅でケアを行う場合になると思います。
 まず、介護用品を入手することがあります。これは、症状によって、必要となるものが変わりますので、担当医や病院のソーシャルワーカーに相談してみて下さい。車椅子や介助ベッドなどは、次の項に示すように公的なサービスによって支給される場合があります。進行が早い場合は、入手した時には使わなくなっていた、というケースも考えられますので、レンタルする方法もあいます。レンタル会社に問い合わせるほか、病院に入っている介護用品の販売店にもカタログが置いてあります。介護用品については、初めてのこととなるとわからない点も多いと思いますので、病院のリハビリテーション科やソーシャルワーカーに相談するのが良いと思います。
 同時に、家庭内介護方法の勉強も必要になります。これも病院や保健所、地域の自治体などで指導を行う場合がありますので、相談してみて下さい。ただ、介護用品も介護指導も、大人やお年寄り向けのものが多いため、見つけるのには苦労するかもしれません。

公的支援の申込み

 まずは、公的な補助・助成についてです。
 ALDは、小児慢性特定疾患に指定されています。申請して認められると、治療費と入院中の食事代などの自己負担分の公費負担が受けられます。つまり、健康保険と併せて、自分で払う費用はなくなります。保健所・保健福祉事務所が窓口になり、都道府県に申請します。自治体によっては、病院が窓口になる場合もあります。認定には1〜2ヶ月程度かかる場合があるようです。それまで支払った費用を遡って申請できる期間が決められていますので、早めに申請されるのが良いと思います。また、ALDは2000年4月より特定疾患にも指定されましたので、18歳以上の患者も公費負担が受けられるようになりました。これについても詳細は、保健所・保健福祉事務所にお尋ね下さい。
 症状によって、身体障害者手帳、療育手帳を申請することができます。認められれば、介護用品の支給や治療費・各種購入費用・税金の減免を受けることができます。福祉事務所・自治体の福祉課が窓口になり、都道府県に申請します。やはり認定には1〜2ヶ月程度かかるようです。
 この他、補助金の支給など自治体が独自に決めた制度がある場合もあります。公的制度については、自治体でかなり差があること、国と自治体というように重複した制度があるときには選択しなければならないケースがあること、などから受けられる制度を良く調べる必要があります。福祉事務所・自治体の福祉課などに相談すると良いと思います。
 いずれにせよ、窓口となる担当者には進行性の病気であることを十分に理解してもらい、早めの手配をお願いするように働きかけていくべきでしょう。
 また、身体障害者手帳、療育手帳を取得している場合、介護ヘルパー派遣などの公的な在宅向けサービスを受けることができます。症状が重くなると、介護にも大変な負担がかかりますので、ぜひ利用したい制度です。
 公的支援についての詳細は、病院のソーシャルワーカー、保健所・保健福祉事務所、児童相談所、福祉事務所・自治体の福祉課などにご相談下さい。患者団体でも相談窓口を設けているところがあります。
 いずれにしても、公的支援を受けるには「時間がかかる」ことに注意が必要です。別のページでも、公的支援については記述する予定です。

告知?

 お子さんがある程度大きくなっていると、自分の病気のことや検査・治療・薬を飲むことなどに疑問を持ち始めると思います。全てを話すことが必ずしも良いとは限りませんが、必要に応じて対話を持つことで、協力を得たり不安を取り除くことができると思います。
 ただし、お子さんに病気のことを話す際は、必ず担当医や精神科の医師、病院のソーシャルワーカーなどとご相談した上で、そのお子さんの年齢や性格などと併せて、慎重に話す内容を決めることをお勧めします。また、MEDOC Projectの子ども向けページには「ガンのこどもと病気について話し合いましょう」という翻訳ページがあります。病気は違いますが、大変に参考になるかと思います。

そして家族

 病気の家族がいるということは、日々の生活を送るにも大変に負担がかかるものです。特に、他に小さな子供がいる家族では、なおさらでしょう。自分たちだけで解決できない場合は、周りの人たちに話して、協力を仰ぐことが必要になります。
 兄弟姉妹がいる場合、必然的に我慢を強いられるのは、彼らでしょう。時に協力してもらい、時に不満を取り除きながら、うまくフォローしてあげて下さい。
 また、介助や入院・通院の時に最も頼りになるのが、祖父母になると思います。ただ、病気 (遺伝子病) ということを話す際には、色々と話がこじれるケースもいくつか聞いています。難しい世代でもあり、実は一番慎重な対応を取る必要があるのかもしれません。必要に応じて、遺伝カウンセリングなどを受けてみて下さい。
 最後に、親 (あなた自身) になりますが、おそらくこのようなページを読んでいられるような方は、熱心に病気のお子さんに接するでしょうから心配はないのですが。ただ、熱心すぎて自分自身がかけている重圧に潰されることがないよう、時には他の人に頼ったり、相談したりしてある意味発散させて下さい。子供は親の、特に母親の気持ちに敏感です。身体的な部分は時々介護ヘルパーなどの公的・私的なケアを積極的に利用するなど、お子さんの精神的なサポートに重点を置いて行うようにしてはいかがでしょう。

 

遺伝カウンセリング

 ALDの遺伝に関する知識を身に付けたい場合は、遺伝科、小児科、産婦人科などの医師による遺伝相談を受けることをお勧めします。特に、兄弟姉妹がいる場合、親類に子供がいる場合、次のお子さんが欲しい場合などでは、正しい知識を身に付けることが必要になると思います。たいていの大きな病院では遺伝相談の外来を設けていますし、保健所などでも開設しているところもあるようです。以下のページで検索できますので、参考になさって下さい。
京都大学 付属病院 臨床遺伝医学情報網 (いでんネット) のページ
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/idennet/
 実は、遺伝に関わる話については、経験上かなり敏感な問題を含む場合が少なくないので、このページではあえて詳しく記述することは避けています。カウンセリングを含め、医療機関の専門家にお任せしたいと考えています。
 ただひとつ言えるのは、誰が悪いという問題ではない (そういう次元の話ではない) ということです。親としてみれば「気にしない」というのは無理な話かと思いますが、あえて自分を責めたり、償いの気持ちを持つことはやめてみてはいかがでしょう。

 

ライブラリ

 ここでは、ALDについての知識を得るために必要な本・ビデオなどを紹介しています。希少難病であるALDは、当然ながらメディアに取り上げられる機会は少ないです。特に日本語でアクセスできるものを紹介します。

医学書関連

小児慢性特定疾患治療マニュアル
 柳澤 正義 監、診断と治療社、14,000円、ISBN4-7878-1078-2
 小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となる疾患についての解説と治療法を記載したマニュアルです。かなり分厚い本になっており、お値段もそれなりに張ります。ALDについては、自治医大 小児科の桃井先生が執筆を担当されており、副腎白質ジストロフィーとして2ページに渡って書かれています。
小児内科 vol28 1996増刊号 小児疾患診療のための病態生理 1
 東京医学社、9,515円
 正確には書籍ではなく、雑誌になるようです。小児疾患についての解説と治療法をまとめたものです。ロイコジストロフィーについて東京慈恵医大 小児科の大橋先生が執筆されており、その中でALDについては約1ページがあてられています。
遺伝カウンセリングマニュアル
 新川 詔夫 他編、南江堂、3,500円、ISBN4-524-20538-1
 遺伝相談にあたって利用されることを目的とした、遺伝性疾患についてのマニュアルです。私共がカウンセリングを受けた病院の医師も使っておりました。ALDについては、1ページ弱に原因、臨床像、出生前診断などについて書かれています。

セミナー資料

ジェンザイム 「ライソゾーム・セミナー」 1999
 ビデオ 2巻
 医薬品会社であるジェンザイム・ジャパンが1999年8月に開催した、ライソゾーム・セミナーの模様を収録したものです。ALDはライソゾーム病ではありませんが、症状や治療法など共通する点があるので参考になると思います。なお、ビデオは非売品です。お貸しすることは可能ですので、興味のある方は までご連絡下さい。

映画・ドラマ

ロレンツォのオイル / 命の詩
 1992年、アメリカ ユニバーサル、監督: ジョージ・ミラー、出演: ニック・ノルティ / スーザン・サランドン / ピーター・ユスチノフ、ビデオ: CICビクター
 ALD患者のロレンツォ少年とその両親オドーネ夫妻の実話を基にした映画です。患者・家族が視る前に注意しなければならないのは、次の2点でしょう。
 まず、ロレンツォ・オイルの効果については、映画が作られた1992年当時とは評価が異なります。次に、かなりリアリティがあり、普通の人にも感動を呼び起こす映画です。心理状態によっては、患者・家族が視ることは避けるべきかもしれません。視ることによって、今後の闘病生活に良い影響があるという自信がある方のみ、ご覧になることをお勧めします。
ER / Season 5
 2000年4月から、NHKにて放映
 大好評の医療ドラマ ER の第5シーズンです。米国では1999年に放映されています。シリーズ中盤でALDの男の子が何回か登場します。残念ながら、結果は良くないようですが。

 

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